様々な分野の専任研究員が、富士山を学術的に掘り下げ、他の世界遺産との比較研究を行いながら、世界遺産富士山の価値を世界に発信します。
そして、国内外の大学・研究機関や博物館・美術館と連携し、国際的な世界遺産研究の拠点を目指します。
- 美術史
- 教授
- 松島仁
- 専門
- 中~近世日本美術史
- 主著
- 『徳川将軍権力と狩野派絵画』
- 自己紹介
- 中世から近世にかけての日本美術史・文化史が専門で、政治と文化の相関関係、レジームとスタイル(政治手法としての文化様式)について研究しています。なかでも徳川将軍と狩野探幽(1602~74)以下の狩野派絵画について関心をもっています。目下の研究テーマは、徳川将軍が肖像画や縁起絵、源氏物語絵、歌仙絵、歌意図、洛中洛外図、富士山図といった伝統的な絵画主題を自己本位に読み替えることにより、いかに文化的な正当性を獲得し、天皇をいただく王朝世界さらに中華世界の文化伝統に対峙しようとしたか-徳川将軍の文化装置としての狩野派絵画です。
今後は明・清などの中華帝国や朝鮮王朝、またムガール朝やサファヴィー朝、オスマーン朝などのイスラーム世界、三十年戦争(1618~48)以降の解体期神聖ローマ帝国にも視野を広げ、相互の比較研究も試みていきたいと思っています。
- 火山学
- 教授
- 小林淳
- 専門
- 火山学、火山地質学、第四紀地形地質学
- 主著
- 富士・箱根火山に関する主な論文
Eruptive history of Fuji Volcano from AD 700 to AD 1,000 using stratigraphic correlation of the Kozushima-Tenjosan (M. Kobaytashi: TephraBulletin of the Geological Survey of Japan, 57(11/12), pp.409-430, 2007)
箱根火山大涌谷テフラ群 -最新マグマ噴火後の水蒸気爆発堆積物-(小林 淳他:火山, 51(4), pp.245-256, 2006年.
- 自己紹介
- 火山の地形や噴火による噴出物とその積み重なり等を詳細に観察することよって、火山の噴火史とその生い立ちを年表として明らかにすることを目指しています。派手な研究ではありませんが、現地で取得した地質データを一つ一つ積み上げることによって、個々の噴火の推移やメカニズムの復元につながります。また、火山の長い寿命の中での今の火山のクセを把握し、来るべき将来の噴火のへの備えの一つとして、ハザードマップや噴火シナリオの構築等に資する貴重な研究と考えています。
一方、爆発的噴火によって生成される火山砕屑物は、火山体を構成する一つの地形を作り上げるほか、上空高く巻き上げられた火砕物は、地形地質の形成過程を明らかするための時間軸になります。私の噴火史研究は、地形地質過程を明らかにする研究とも深くつながっており、この研究を通じて、私たちが普段生活の場としている土地の成り立ちを理解し、地域のことを深く知るきっかけ作りに役立つものにしたいと思います。
- 歴史学
- 教授
- 大高康正
- 専門
- 日本中世史、社会史
- 主著
- 『参詣曼荼羅の研究』、『富士山信仰と修験道』
- 自己紹介
- 専門は日本中世史、社会史です。多くの人々を魅了してやまなかった寺社参詣、聖地巡礼の世界を研究しています。前近代社会において、身分や性別を超えて、様々な交通障害や身辺の危険をも省みず、なぜ遠い寺社や霊場まで参詣を行っていたのでしょうか。そこには当時の人々の思考や精神が内在しています。古文書・古記録や絵画資料、民俗資料などを通して、信仰の対象としての富士山の歴史を広く、深く研究いたします。
- 日本文学
- 准教授
- 田代一葉
- 専門
- 日本古典文学・和歌史
- 主著
- 『近世和歌画賛の研究』
- 自己紹介
- 専門は、日本の古典文学で、とくに江戸時代の和歌や俳諧、古典学について勉強をしています。もともと、絵を見るのが好きだったこともあり、絵画に和歌などの詩歌を添える画賛という文芸の、詩・画・書一体となって作り上げる世界に興味を持ち、これまで研究を進めてまいりました。
今後は、富士山を中心とした駿河国の歌枕について、詠みぶりの時代的な変遷をたどるほか、紀行文や小説類にも目配りをしつつ、言葉の側から「芸術の源泉」としての富士山の魅力を追及していきたいと思っております。
- 民俗学・文化遺産学
- 研究員
- 山川志典
- 専門
- 民俗学・文化遺産学
- 主著
- 「文化遺産の保護における地域遺産制度の役割」(筑波大学博士学位請求論文、2018)
- 自己紹介
- 専門は民俗学と文化遺産学です。この2つの学問領域は、身近な人々(普通の人々)が、どのような暮らしの営みを伝えてきたのかを考え(民俗学)、それを後世にどのように伝えていくのかを考えていく(文化遺産学)という、「伝える」という接点で結びついていると考えています。
具体的には、富士山麓で暮らす人々が伝承してきた、自然環境との付き合い方や暮らしを営むための知恵・工夫・技術について、生活の道具等「かたちあるもの」から、信仰に関する祭礼・芸能、口承文芸等「かたちのないもの」まで幅広く手がかりにしながら研究しています。そして、世界遺産である富士山を軸に、国内外の文化遺産の保護―どのように伝え、遺していくのか―のための仕組み(保護制度・手法や利活用計画・方法)やその基となる考え方や理念について、研究しています。